少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

どんな風に呼ばれたい?

2020/02/07

 

配偶者の呼び方に関する調査を目にしました。

 

女性は配偶者から「妻」と呼ばれたい人が最も多い一方で、実際には配偶者を「嫁」と呼ぶ男性が最多であり、「妻」と呼ぶ人は10%程度でした。

 

また「家内」という呼び方は、50歳代以上にはよく見られるものの、40歳代より若い世代ではほとんど使われていないようです。

 

「家内」は、他人に向けた配偶者の呼称という意味では、「奥さん」等の呼び方に比べて本来は正しいのですが、「家の中にいる人」という意味を持つ点に、共働き世代が多い40歳代以下では違和感を覚えるのかもしれません。

 

ちなみに、私の知人男性に配偶者を「相方」と呼ぶ人がいますが、夫婦ともに仕事を持ち、子育ても同じように分担する彼らには、それがピッタリくる呼び名のようです。呼び名が実際の夫婦関係とかけ離れていないことも大切でしょう。

 

また、配偶者がお互いを「パパ/お父さん」「ママ/お母さん」と呼ぶ習慣は世界に類をみず、夫婦よりも親子が中心の日本の家族関係を象徴しています。

 

夫婦関係に重きを置く英語圏では、互いを「ハニー」「スィーティー」など甘さを連想する呼び方をしますし、それ以外の欧米諸国では、「子羊ちゃん」「熊さん」など動物に例えた愛称が多いようです。

 

配偶者の呼び方ひとつにも、時代や文化が反映されていることは実に面白いですね。

 

ところで、逆に、呼び方を変えることによって人や関係に影響があることも心理学ではよく知られています。たとえば、女性が「お母さん」ではなく、ファーストネームで呼ばれるようになるだけできれいになるという研究があります。

 

また、社員同士がニックネームで呼び合うようにした会社では、退職者が減ったうえに業績が30%もアップしたということも報告されています。

 

たかが呼び名、されど呼び名。

どうせなら、呼ばれるだけでいい気分になれるものだと嬉しいですね。

 

 

坂田 真穂(さかた まほ)

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『いのちを巡る臨床―生と死のあわいにいきる臨床の叡智』(創元社, 2018)など。

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