少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

小言は、こっそり・・・

2019/12/06

 

久しぶりに友人と居酒屋に出かけたときのこと。

 

近くのテーブルから「それがダメだって言ってるんだよ!」と荒げた声が聞こえてきました。反射的に声がする方を見ると、サラリーマンが3人。

 

上司と思われる男性が、若い男性の一人を叱責しているようでした。気の毒に、若い男性は「はい、はい」と委縮しながら答え、もう一人も気まずそうにしていました。

 

叱責されながら飲むお酒はちっとも美味しくないことでしょう。だけど、説教をする方は饒舌です。

 

人を叱責するのは時に、「相手より優れている」という気持ち良さに浸れる行為です。また、人前で行えば、周囲に自分の優越性を印象付けることもできます。

 

だからこそ、人を叱る時は、それが本当に相手のために行われているか、適切な状況で行われているかを自問しなければなりません。

例えば、相手がたとえ子どもであっても、人前で容赦ない叱責をすることは、多くの場合、適切ではありません。叱られた人の自尊心を傷つけてしまうからです。

 

指導とは、相手に正しい行動や考え方を教えることであり、そのために、相手を不愉快にさせる必要はありません。

 

叱らなくとも、具体的なアドバイスをするだけで良いことが多いのです。このことは、人前で不愉快なコメントをいう指導者には誰も従いたくないというオーストラリアの研究や、部下に信頼される優れた管理職は、豊かな経験と気配り能力を併せ持つというコロンビア大学の研究からも明らかです。

 

とはいえ、部下や後輩を叱責しなければならない場合もあります。そのような時は、主語を「あなた」ではなく「私」にして伝えてみてはいかがでしょうか。

 

冒頭の「(あなたは)それがダメだって言ってるんだよ!」も「(私は)こうした方がうまく行くと思うよ」にするだけで、部下思いのアドバイスに変わるかもしれませんよ。

 

 

 

坂田 真穂(さかた まほ)

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『いのちを巡る臨床―生と死のあわいにいきる臨床の叡智』(創元社, 2018)など。

日赤和歌山医療センターHP

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