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がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。
2019/01/10
前回は画像診断が果たす役割や重要性について、お伝えしました。
今回からは、さまざまな画像診断の方法や役割を、一つひとつ掘り下げていきます。
まずは、一般的に「レントゲン検査」と呼ばれている、X線検査についてです。
X線は放射線の1つで、もちろん目には見えません。
「レントゲンを撮りましょう」と言われた経験のある方は多いですよね。
X線を用いて撮影した写真を「レントゲン写真」ともいいます。
これは、X線がドイツのレントゲン博士によって初めて発見されたことに由来しています。人名だったのですね。ちなみに、レントゲン博士は初代ノーベル賞受賞者です。
実は高度な読影技術が必要な、X線検査
X線検査は、撮影した臓器や組織の影から病気を診断します。
診断する医師は、"影の様子"から体の状態を読み解かなければならず、高度な読影技術を必要とします。
単純撮影と、画像診断をよりわかりやすくするためにバリウムなどの造影剤を用いる方法があります。
造影撮影法は造影剤によって画像に濃淡が出るため、食道、胃、大腸など消化管にできたがんの診断に使われています。
この造影撮影法の中に、二重造影法というバリウムと空気を送り込む検査方法があります。これは日本で開発された技術で、胃や腸の粘膜の細かい異常も発見できるため、早期がんが発見しやすくなりました。
肺のがん、骨のがん、乳がんなどの診断に有用
肺のがん、骨のがん、乳がんなどの診断にはX線検査の有効性が認められています。早期がんの段階であっても、確定診断に近いところまで期待できます。
乳がんの検診・精密検査では、低電圧のX線を用いたマンモグラフィーが使われます。
これはがんと乳腺の差をより正確に見極めるためなのですが、乳房を強く挟み付けて厚みを薄くしないと良質な画像が得られないため、どうしても痛みを伴ってしまいます。しかし、乳がん診断の決め手として世界中で行われている方法なので、ご理解いただければ幸いです。
また、胃の検査時に飲むバリウムなども、辛いと思われている方が多いと思います。
しかし、胃がん検診ガイドラインでも、検診を受けることで死亡率が減少することが認められています。
早期発見、早期治療のために、技術も発達し、医師も影を読み解く力を磨いています。
ぜひ、がん検診もこまめに受けて、ご自身の体の中を定期的にチェックしてみてくださいね。
さて、次回は体の断面を撮影して画像診断をする、CT検査についてです。
平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)
日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長。
1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員なども務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。