日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

婦人科治療の進歩② 手術療法

2022/04/07

日赤和歌山医療センターには、常勤の産婦人科医が10名以上在籍しており、新しい婦人科医療をどんどん取り入れ、充実した治療体制整備に努めています。

 

最近の婦人科治療について、山西優紀夫副部長に伺っています。

 

 

婦人科の手術は開腹手術になることが多く、心配で不安があるという人も多いです。

 

私たちも、いきなり「がんでした。手術です」と伝えるのは心苦しいのですが、ご自身の状態を知っていただいて、適切な治療を受けて1日でも早く日常生活に戻り、寿命をまっとういただくことを目標にしています。

 

 

卵巣・子宮など婦人科で手術する臓器は、骨盤の中で小腸、直腸、膀胱、尿管などの臓器やリンパ節なども近接しているため、ごく早期を除き、合併切除と言って周囲の臓器などを一緒に切除する手術が多いです。

 

これは、がんを残存させないだけでなく、再発を防ぐために周辺への転移なども考慮して取り除くことがあるからです。

 

このように、どうしても大きく開腹しなければならない手術の場合、当医療センターでは、普段、腸などの消化管や肝臓など腹部臓器を手術している外科と協力し、最善の手術法を検討しています。

 

 

卵巣がんの手術療法

婦人科の病気の中でも、卵巣がんは、いろいろなところに腫瘍ができてしまいます。腫瘍はできるだけ取った方が、その後の経過が良いと言われているため、卵巣がんの手術では、卵巣の他に、腸管や腹膜など胃の下にある臓器を合わせて摘出することが多く、大きな手術になります。

 

 

子宮体がんの手術療法

最近、増加傾向にあるのが子宮体がんです。

初期に見つかることが多いため、手術で十分に取り切れる場合がほとんどですが、リンパ節郭清(かくせい)といい、子宮の周囲にあるリンパ節への転移があった場合には、かなり広範囲にリンパ節も取る手術になります。

 

稀にですが、初期でも、がんの種類や広がり方によっては、お腹や骨盤の中のリンパ節を全部取らないといけないこともあり、大きな手術になる場合があります。

 

 

子宮頸がんの手術療法

最後に、子宮頸がんについて、ご説明します。

がんの広がりによって、子宮頸部を大きく切除する広汎子宮全摘術という手術が多いです。子宮頸部は骨盤の底にあり、周りには膀胱・直腸など、日常生活で排泄に関わる臓器が近くにあり、それら臓器へ向かう神経などにも注意しながら手術します。

 

 

上記のようながんの診断を受けると、戸惑われる人が多いです。ご本人だけでなくご家族も一緒に来てもらい、説明をじっくり聞いていただいて、ご要望なども話し合い、納得のいく治療を選択していただけるように努めています。

 

患者さんの全身状態と治療、生活への影響などを総合的に考え、どのような手術が最善か説明を尽くしますので、安心して何でも質問いただきたいと思います。

 

山西 優紀夫(やまにし ゆきお

日本産科婦人科学会産婦人科指導医・専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医。

息子のサッカー観戦が、最近の休日の楽しみです。

 

 

 

婦人科治療の進歩① 遺伝医療(2022年03月24日公開)

 

婦人科治療の進歩② 手術療法(2022年04月07日公開)←今回

 

婦人科治療の進歩③ 腹腔鏡・ロボット支援下手術(2022年04月21日公開)

 

婦人科治療の進歩④ 放射線治療(2022年05月05日公開)

 

婦人科治療の進歩⑤ 子宮頸がんワクチン(2022年05月19日公開)

 

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