がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

無痛で身体に無害な超音波(エコー)検査

2019/07/16

平岡先生は京都大学医学部を卒業して放射線科医となり、2007年には京都大学医学部附属病院がんセンターの初代センター長に就任。2015年の退官まで20年以上にわたり京都大学大学院医学研究科の教授としてがん治療に関わり続けてこられてきました。

 

がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んでこられた平岡先生に、がんについてわかりやすく教えていただきましょう。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

 

 

今回と次回の2回にわたり、がんの画像診断の方法のひとつである超音波検査について、お届けします。

 

超音波とは、人が聴くことのできない高い周波数の音波のことです。

超音波検査は、この周波数を利用した画像診断です。

 

今回は超音波検査の仕組みや、この検査が有用な病気について解説していきます。

 

 

超音波検査の仕組み

 

超音波検査は、この人間には聞こえない超音波を体に当て、体内の組織にぶつかってはね返ってきた音を画像にして体内の異常を調べるものです。

 

モニターに映し出された体内の様子をご覧になったことも多いはず。

その画像によって、体内を観察していきます。臓器の動いている様子などをリアルタイムで観察できるのも特徴のひとつですね。

 

検査のときには、身体と超音波を出す器具(プローベと言います)の間に空気を介さないようにするため、ゼリーをつけて密着させます。

 

超音波検査はエコー検査とも言われます。

こちらの呼び方のほうが、親しまれているかもしれないですね。

 

どうしてエコーなのかというと、超音波が物体に当たりはね返ってくる現象が、やまびこ(エコー)に似ているからです。

 

 

超音波検査は身体に無害

 

レントゲンやCT検査などはX線を利用するため、人体に影響がないわけではありません。わずかではありますが、放射線被曝を受けます。

 

一方、超音波検査は、身体に無害です。

痛みもなく、身体への負担も少ないため、繰り返し検査を行うことができます。

妊婦さんにも安心して検査ができます。

妊婦健診のたびに、超音波(エコー)検査で胎児の心臓の動きまで毎回詳しく見られるのも、無害であるからです。

 

日常診療でも用いられることが多い超音波検査。

安心して検査を受けてくださいね。

 

 

早期発見で健康を守る超音波検査

 

超音波検査が有用とされているのは、頸動脈、甲状腺、乳房、心臓、腹部(肝臓、胆臓、膵臓)、骨盤部(腎臓、卵巣、子宮、膀胱、前立腺)などです。

 

骨や空気は超音波が通らない特性があり、脳、肺、骨の病気を調べる時には使用されませんが、部位によっては、CTやMRIよりもよい情報が得られます。

 

このうち、大いに診断に役立っているのは、乳がん、肝がん、胆管・胆のうがん、膵がんです。

 

 

治療が難しいがんの代表である胆管・胆のうがん、膵がんは、どれだけ早期の段階で発見・診断するかが大切です。

 

そのほかのがんも、早期のがんは初期症状がなく、超音波検査で発見されることも多いです。

 

この検査は病変の早期発見に非常に役立っています。

当院でも毎日数多くの超音波検査が行われています。早期でがんを診断し、治療につなげていきます。

 

 

さて、次回も超音波(エコー)検査のお話です。乳がんや腹部臓器の診断の話題をお届けします。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長。

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員なども務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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