少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

ピッタリは見つかる? 変わる?

2021/03/05

 

マスク着用や手指の消毒、外出自粛などを伴う生活も、とうとう一年になりました。

 

感染予防策が身に着いた私たちでも、長引く流行によるストレスには、慣れることが難しいようです。

 

こうした社会状況を受け、テレビや書籍では、自粛などへのストレス対策が頻繁に取り上げられるようになりました。

 

目標を決めて自分にご褒美をあげる、日記などで気持ちを書き出す、瞑想をするなど、いろいろ提案されています。

 

そのような中で、最近は「どれが一番良いのですか?」という質問や、「やってみたけれどスッキリしない」といった相談を受けることも増えました。

 

しかし、残念なことに『最も効果的なストレス対策法』など無いのです。私たちはそれぞれ違う好みや価値観をもっていますし、置かれている状況も異なるからです。

 

誰にでも、どんな状況にでも最善という方法は無い中で、自分自身や状況にあったものを選ぶ必要があります。

 

例えば、先のご褒美法は、手軽に実施できる点で優れています。

しかし、ストレスが軽度の場合はこれだけで解消できますが、重度であれば難しくなります。

 

日記法も、一人で取り組め、人によっては気づきやカタルシスを得られますが、書くことが苦手な人は、問題の焦点が合わず、効果は期待できません。また、一人で書いているうちにネガティブすぎる考えに陥り、現実とかけ離れた結論に至る危険性も孕んでいます。

 

その点、誰かと話す場合は、相手がいることで、行き過ぎた考えに至る危険性は低く、一人で抱えきれないストレスも共感によって緩和されたり、考え方の新しい枠組みが生まれたりします。しかし、コミュニケーションが苦手な人は、逆にストレスになることもあるでしょう。

 

このように、いずれの方法にも一長一短があるため、自分に合うと思う方法を試してみて、合わなかったら別の方法を探ってみることが必要です。

 

また、たとえ一旦は合わなかった方法でも、時間が経てばストレス状況が変わり、合うようになるかもしれません。

 

逆に、状態の変化によって同じ方法がずっと最善とも限りません。柔軟な姿勢で、たくさんある対処法からその時の自分に合うものを見つけていけると良いですね。

 

 

 

坂田 真穂(さかた まほ)

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『ケア ー語りの場としての心理臨床ー』(福村出版, 2020)など。

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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