がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

がんの標準治療① 科学的根拠のある治療法

2021/08/17

がん治療について、「標準治療」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?

王道のがん治療のことを「標準治療」と言います。

 

 

標準治療は、大規模な臨床試験によって科学的に治療効果が示され、かつ安全性が許容された治療のことです。

 

最も推奨される、最良の治療法です。

 

 

がんの「標準治療」とは

標準治療の主たるものは、今まで紹介してきた手術、放射線治療、薬物療法という3大治療です。

 

その他の標準治療として、食道がん、胃がん、大腸がんの早期例を対象とした内視鏡治療、肝臓がんに良く用いられるラジオ波焼灼療法、動脈塞栓療法、がんを41〜43度まで加温する温熱療法(ハイパーサーミアとも言います)などがあります。ただ、3大治療に比べると対象は限られます。

 

 

いずれの治療も1つだけで実施されるほか、複数の治療法と組み合わせて、有効性を高めることも少なくありません。手術後の前後に放射線治療あるいは薬物療法を用いたり、両者を共に用いることもあります。放射線治療と薬物療法を組み合わせた化学放射線治療は、局所に進展したがんの標準治療の1つとなっています。

 

このように、標準治療はがんの種類ごと、進行度に合わせた基本となる治療法です。

 

年齢や体調なども総合的に判断し、最もよい効果が期待される治療を選択していきます。

 

 

標準治療は、最良の治療

標準治療と言うと、一般的あるいは平均的な医療と解釈され、実はもっと優れた治療があるのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。

 

 

しかし、「現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療(国立がん研究センターがん対策情報センターより)」が標準治療です。

 

がんの種類ごとに作成されているガイドラインの目的は、標準治療の記載であると言っても過言ではありません。日々進歩する治療法はガイドラインによって共有され、診療の質が保たれています。

 

最新の標準治療の中から、患者さんとがんの状態を見極め、最適な方法を単独あるいは複数が組み合わされて選択されます。このとき、複数の選択肢があることも少なくありません。

 

 

2021年1月に当センター内に設立したがんセンターでは、各臓器がん別に14のユニットを創設し、手術、放射線治療、薬物療法、内視鏡治療といった専門医が情報を共有し、それぞれの患者さんに最適な治療を検討し、治療方針を決定していきます。そして、患者さんの意向に合った標準治療を提供しています。

 

安心して標準治療を受けていただきたいと思います。

 

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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