ホーム > 新着情報 > お知らせ > バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症に対する感染対策について
2022年01月05日
2020年から和歌山市内でのバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の感染報告(届出)急増に対し、2021年12月に国立感染症研究所の薬剤耐性感染症の専門家による複数医療機関の訪問調査がありました。
当医療センターも、その調査を受け、感染対策を見直しましたので、お知らせします。
【和歌山市の患者数の推移】
2021(R3) (49週まで) |
2020(R2) | 2019(R1) | 2018(H30) | 2017(H29) | |
全国 | 118 | 134 | 80 | 80 | 83 |
和歌山県 | 11 | 13 | 0 | 0 | 0 |
和歌山市 | 11 | 12 | 0 | 0 | 0 |
※ 令和3年12月27日付和歌山市保健所資料から転載
腸球菌は、ヒトや動物の腸内に一般的に存在する細菌で、バンコマイシンという抗菌薬に対し耐性のある腸球菌をVRE(vancomycin-resistant enterococci)と言います。
健康な人の腸内にVREが存在しても、病原性が非常に弱いので感染症を発症させることはなく、一定期間を経て消滅します。しかし、手術後の入院患者さんや重篤な基礎疾患を有する患者さん、免疫低下が著しい患者さんが発症した場合、発熱などの症状がでたり、稀に重症化します。
VREは、感染症法で5類感染症に分類され、医療機関は感染症を引き起こした場合に届け出る必要があります。保菌者の便・尿処理後の不十分な手指消毒や汚染されやすい環境で、直接的・間接的な接触感染で伝播する可能性があり、医療機関では感染管理対象となっています。
当医療センターでは、これまでにVREにより治療が必要となったケースは1件で、死亡例はありません。
国立感染症研究所の訪問調査の後、院内の感染状況を把握するため、2021年12月14日(火)~24日(金)、入院患者さん630名にスクリーニング検査を実施したところ、8名の患者さんが保菌されていることが分かりました。これらの患者さんは全員無症状で、既に退院・転院されている患者さんもおられます。感染症専門医・感染管理認定看護師・感染制御認定臨床微生物検査技師・感染制御認定薬剤師らを含むICT (Infection Control team:院内感染対策チーム)が中心となって、感染拡大防止に努めています。
●標準予防策、接触感染予防策の徹底
●トイレ、汚物室など汚染されやすい場所の対策強化
●尿カップ等、汚染の可能性のある物品のディスポーザブル(使い捨て)化
●保菌者の広がりの把握、早期発見を目的としたスクリーニング検査(保菌調査)
●抗菌薬適正使用の啓発