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泌尿器科


当科について

ご案内

場所

本館2F

受付時間

新患:8時〜11時30分まで
再来:8時〜11時30分まで

診療部の特色

当科は、地域の診療拠点として近隣医療施設と連携し、高度医療を提供しています。医学の進歩に伴い治療選択肢が増えているため、十分な説明の上、患者さんやご家族に治療方針を決めていただきます。2015年度の総手術件数は1091件でしたが、麻酔科の協力の下、低侵襲で安全確実な手術を行えるように心がけています。
 
2011年に第二泌尿器科が新設されましたが、現在は2診療科が合併して第一・第二泌尿器科と改称し、協働で診療にあたっています。朝夕の泌尿器科カンファレンスや他科、多職種合同カンファレンスに加え、定期的に全病棟の回診を行い、診療科全体のチーム医療として責任を持って診療にあたっています。

あらゆる領域でQOLを重視した低浸襲な治療が推進されています。当科でも年々腹腔鏡下手術が増加し、副腎腫瘍はもとより、腎癌、前立腺癌、浸潤性膀胱がんに対する手術のほとんどを腹腔鏡下で行っています。さらには、腎移植のドナーの腎採取も腹腔鏡下で行っています。しかし、開放手術に利点がある場合もあり、その適応を十分検討して行うようにしています。

標準的医療を安全確実に行えるよう心がけると共に、高度医療にも積極的に取り組んでいます。2012年4月に前立腺がんに対するロボット支援手術が保険適応となったのを受け、2013年2月daVinci Siの西日本一号機を導入、同年5月からは同機を用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘出術を開始、2016年9月までに190例行っています。2016年4月には腎腫瘍に対するロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術が保険適応となり、当センターでも良好な治療成績となっています。2019年からは、骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱)に対する腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)を開始しました。さらに、ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除、体内尿路変向術開始のために準備しています。
 
尿路結石の治療も年々大きく変わってきています。従来、体外衝撃波で破砕できないサイズの腎結石は腎瘻からのアプローチ(PNL)が必要でしたが、細径の軟性尿管鏡の出現により経尿道的にも治療可能になってきています(f-TUL)。

新しい医療機器は、その利点を最大に活用するためにはトレーニングが必要です。当科では、スタッフを新技術習得のため先行施設への派遣や指導医の招聘を積極的に行い、我が国における最新医療を安全に提供するよう心がけています。2017年には経尿道的尿管結石砕石術(TUL)を163件施行し、日本においても有数の手術件数となっています。

現在の社会情勢に沿った医療需要に応えるためには、病院完結型医療から地域完結型医療への転換が必要とされています。そのためには、近隣医療施設との連携が不可欠です。当科でも日常の連携に加え、前立腺疾患や排尿管理などについての連携パス作成を地域の医療関係の皆様にご意見を伺いながら進めています。また、医療は医療者・患者・社会が三位一体となって作り上げていくものであり、この三者に共通の問題意識が必要であると考え、市民公開講座などの開催などに積極的に取り組んでいます。

男性機能障害、男性更年期(LOH症候群)、男性不妊症に関しては、専門医不在のため対応しておりませんので、ご了承ください。


スタッフ紹介

医師

伊藤 哲之 (いとう のりゆき)

役職 第一泌尿器科部長 院長補佐
卒業年 昭和63年
専門分野 腹腔鏡手術、ロボット手術、腎がん、腎移植
資格 医学博士
京都大学医学部臨床教授
日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
ダヴィンチ手術資格
ロボット支援手術プロクター
日本内視鏡学会腹腔鏡技術認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本泌尿器内視鏡学会代議員
泌尿器科紀要Editorial Board

玉置 雅弘 (たまき まさひろ)

役職 第二泌尿器科部長
卒業年 平成4年
専門分野 泌尿器悪性腫瘍
泌尿器腹腔鏡手術・ロボット手術
間質性膀胱炎
資格 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡技術認定医
ダヴインチ手術資格
ロボット支援手術プロクター

中嶋 正和 (なかしま まさかず)

役職 副部長
卒業年 平成14年
専門分野 泌尿器悪性腫瘍
尿路感染症
排尿障害
漢方
資格 医学博士
日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
日本東洋医学会認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医

山田 祐也 (やまだ ゆうや)

役職 医師
卒業年 平成23年
専門分野  
資格 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
ダヴィンチ手術資格

樋上 健介 (ひかみ けんすけ)

役職 医師
卒業年 平成24年
専門分野 尿路結石
資格 日本泌尿器学会泌尿器科専門医
ダヴィンチ手術資格 

藤原 裕士 (ふじわら ひろし)

役職 医師
卒業年 平成27年
専門分野  
資格 ダヴィンチ手術資格 

坂野 遼 (ばんの はるか)

役職 医師
卒業年 平成28年
専門分野  
資格  

林 正 (はやし ただし)

役職 嘱託
卒業年 昭和50年
専門分野 前立腺疾患の治療
資格 日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医

前立腺がん

前立線は男性の膀胱の出口で尿道を取り囲むように存在する、精液の大部分を造る臓器です。前立腺がんは一般に高齢男性特有のがんで、加齢に伴い罹患率が増加します。高齢化や生活の欧米化などに伴い、我が国の前立線がんの罹患率は2015年には胃がん、肺がんを抜いて1位となり、2019年においても上位になると予想されています。一方で、様々ながんの中でも前立腺がんは比較的ゆっくり進行することが多く、適切な治療を施せば根治や長期生存が期待できます。

PSA検査と前立腺生検(ぜんりつせんせいけん)

PSA検査は前立腺がんの早期発見に極めて優れた腫瘍マーカーであり、血液検査で簡単に調べることが可能です。基準値は4.0ng/ml以下とされており、基準値を超える場合には、まずは直腸診とMRI検査を行います。

さらに前立腺がんが疑われた時は、前立腺針生検が必要です。前立腺針生検とは、前立腺の組織を超音波で確認しながら、肛門や会陰から特殊な針を用いて小さな組織を10~24ヵ所程度採取し、病理検査でがんの有無を評価する検査です。検査後は血尿や肛門からの出血がみられますが、経直腸針生検のみの場合は外来で施行可能です。一般にPSA値が4以上10未満(グレーゾーンと呼ばれる)では約3割の方で、また10以上20未満では約5割の方で前立腺がんが見つかり、高値になるほどがんの検出率が高くなります。

もし、一度の検査でがんが検出されなくても、引き続き注意深くPSAを定期的にチェックしていくことが大切です。また、PSAが4.0以下であっても上昇傾向が明らかな場合などでは針生検が必要な場合もあります。

もしがんが見つかったら

前立腺がんは、一般的にリンパ節や骨に転移することが多いのが特徴です。そのため、もしがんが見つかったら、転移がないかどうかを評価する必要があります。一般には、PSAの値にもよりますが、CT検査や骨シンチなどでがんの進行程度を評価します。

前立腺がんの治療

転移がなく前立腺にがんが限局している場合には、根治を目指す局所治療(摘出手術、放射線治療など)、転移が明らかな場合には進行を抑制する全身治療(ホルモン療法や化学療法など)を行うのが一般的ですが、患者さんの年齢や合併症の有無などにより最適な治療を選択していきます。50、60歳代の患者さんで、がんの根治性を優先する際の初期治療は摘出手術をお勧めしています(再発時に放射線治療が追加できるなどのために)。悪性度が特に低いがんと予想される場合は、治療を開始せず厳重経過観察(アクティブサーベイランス)をする方法もあります。

手術治療

前立腺がんの手術では、前立腺に付着する精嚢という臓器と一塊にして前立腺を丸ごと摘出します。前立腺内部を尿道が通っているため摘出後は尿道が途切れた状態になりますが、膀胱の出口と尿道断端部を再吻合し自然に排尿できるよう再建します。

かつては開腹手術で行うのが一般的でしたが、最近ではロボット支援腹腔鏡手術が一般的になってきました。当センターでは手術支援ロボットを2013年に導入し、全例ロボット手術で行っており300例以上の実績があります。前立腺がんの術後には腹圧性尿失禁を生じることが多くしばらくオムツやパッドが必要となりますが、多くの患者さんは数ヵ月単位で日常生活に支障のない程度まで改善します。また、術後は前立腺とともに勃起に関わる神経も犠牲にするため勃起不全(ED)となりますが、針生検でがんが検出されていない側の勃起神経の温存が可能です。

ロボット手術では術中出血も少なく早期退院が可能であり、術後1週間程度で退院となります。 摘出した前立腺の病理結果により今後の経過観察や追加治療を行います。術後PSA値が低下しますが、時に下がりが悪かったり、いったん下がりきっても再度上昇する(PSA再発)ことが約20~30%の症例で認められます。そのような場合には必要に応じ追加治療を検討していきます。

放射線治療

手術に代わる根治的治療として放射線治療も有用です。当科では合併症や年齢などの理由で手術が難しい場合や、術後に局所再発が疑われる場合などに施行しています。放射線治療科と協力して精度の高い放射線治療(IMRT)を提供しており通院での治療が可能です。ウイークデイは毎日通院し、治療終了まで2~3ヵ月の治療期間となります。再発リスクによって放射線治療前後に内分泌療法を併用します。2020年度には症例によって直腸前にスペーサーを注入し直腸の合併症を減らす方法を導入する予定です。

全身治療

1)内分泌療法について
前立腺がんにきわめて特徴的なのは男性ホルモン依存性、すなわち、男性ホルモンが前立腺がんの増殖を促進するということです。男性ホルモンは、ほとんどは精巣で造られますが副腎という臓器でも造られています。この男性ホルモンを抑制する治療が、いわゆる内分泌療法(ホルモン療法)です。両側の精巣を手術で摘除(外科的去勢)、あるいは数ヵ月毎に皮下注射(内科的去勢)を行います。さらに、症例によっては内服薬(抗男性ホルモン製剤)を併用することで、副腎由来の男性ホルモンを含め、ほぼ100%近い男性ホルモンを抑えることが可能です。

しかし、極めて有効性が高い一方、平均2年程度(がんの性質やステージにより差があります)で初期の治療効果が失われ、再びPSAが上昇するという現象(再燃)が見られます。これは、初期の治療に抵抗を示す細胞が再び増殖してきたことを意味するもので、この段階の前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がんと呼びます。このような場合、投与する薬剤を変更することで病勢を抑制し、再度PSAの低下が期待できます。最近は、これら去勢抵抗性前立腺がんに対する新薬も複数保険適用になっており、今後さらに前立腺がんの予後を改善することが期待されています。

2)化学療法(いわゆる抗がん剤治療)
一般に、去勢抵抗性前立腺がんや転移(特に内臓転移や大きな転移巣)を有する前立腺がんに対して行います。特に、本来の前立腺がんの性質である男性ホルモン依存性を失ったがんは、各種ホルモン療法にも十分な効果が期待できないことも多く、時期を逸することなく化学療法を考慮する必要があります。ドセタキセルや、カバジタキセルなどのタキサン系の抗がん剤が用いられます。初期は入院治療を要しますが、有害事象(副作用)が軽度であれば通院治療も可能となります。

尿路上皮がん(膀胱がん・腎盂がん・尿管がん)

“がん”はどのような臓器からも発生しますが、“尿路上皮から発生したがん”を尿路上皮がんと呼んでいます。腫瘍ができる場所によって、腎盂がん、尿管がん、膀胱がんなどと呼ばれており、頻度としては膀胱がんが最も多く、腎盂がんや尿管がんは比較的稀です。

尿路上皮がんは、「時間的・空間的に多発しやすい」という特徴があります。つまり、がん細胞が尿の流れに乗って、他の尿路上皮(特に下流)で生着するため多発しやすく、また、がん細胞を完全に摘出した後も時間が経ってから再発しやすいという特徴があります。

尿路の解剖とそれぞれに発生するがんの名称

最初の症状としては肉眼的血尿(赤い尿)が多いですが、検診で見つかったり、膀胱炎様の症状(尿の回数が多い、排尿時に痛みがあるなど)で見つかることもあります。腎盂がんや尿管がんでは、腰(腎臓のある部分)の痛みの訴えで見つかることもあります。特に1回でも血尿が出た場合は、必ず精密検査を受けてください。

尿路上皮がんは、粘膜内にとどまる(粘膜より下へ浸潤しない)表在性がんと、粘膜から根をはやしていく(粘膜より下へ浸潤する)浸潤性がんとに分けられます。表在性は転移をすることは稀ですが、浸潤性がんは転移をきたしやすいためできるだけ早く見つけて治療する必要があります。

いずれの場合も、尿路上皮がんは最初に発生した部位以外の腎盂・尿管・膀胱に再発することが多く、このため、治療が終わったあとでも長期間にわたり再発の有無を調べる検査が必要です。

どういう人が尿路上皮がんになりやすいのか?

尿路上皮がんがなぜ起こるかについては、未だに良く分かっていません。しかし、喫煙を嗜好する人や特殊な職業に就労されていた人は尿路上皮がんになりやすいということは分かっています。これは、喫煙や特殊な化学物質(染色業などの人)に曝された場合などに、その人の尿に混ざっている発がん物質が尿路の粘膜にがんを引き起こすと考えられています。したがって、尿路上皮がんの再発を少なくするためにも、喫煙されている方は禁煙してください。

膀胱がん

膀胱がんの診断

膀胱がんの進行度(広がり)は主に膀胱壁への深達度(深さ)によって決められており、早期の表在性膀胱がん(Tis,Ta,T1)か、進行した筋層浸潤性膀胱がん(T2 以上)か、を調べることが重要です。まず内視鏡手術(TUR-BT)により採取されたがん組織を顕微鏡で調べる病理診断が行われます。さらに超音波やCT、MRI、骨シンチグラフィーなどで転移の有無を評価して、総合的に判断して病期(stage)を決定します。

TUR-BTのイラスト

膀胱がんの臨床病期・T分類について

Stage 0is

Tis のことで、上皮内がん(CIS)と呼ばれます。膀胱粘膜の表面下を這うように発育する特殊なタイプで悪性度が高いがんです。内視鏡で膀胱を観察しても腫瘍が見つからないことが多く、尿細胞診検査や経尿道的膀胱粘膜生検によってはじめて見つかります。浸潤がんとなる可能性があります。他臓器へ転移を起こすことがあります。

Stage0a, Ⅰ

Ta, T1 のことで、いわゆる表在性膀胱がんです。膀胱の内腔へ成長しますが、根は浅く、表面は乳頭状(カリフラワー様)の外見です。このタイプのがんは他の臓器に転移をすることは稀です。

Stage Ⅱ,Ⅲ

T2, T3 のことで、筋層浸潤性膀胱がんと呼ばれます。粘膜から発生したがんが、粘膜より下のほうへ浸潤し筋層まで深く根をはやしている状態です。放置しておくと膀胱の壁をこえて周囲の臓器へ浸潤したり、他の臓器へ転移したりします。

Stage Ⅳ

T4または他臓器に転移のあるさらに進んだ膀胱がんです。粘膜から発生したがんが、すでに膀胱の壁をこえて周囲臓器へ浸潤している、あるいは他臓器に転移が認められる状態です。


膀胱がんの治療

膀胱がんの診断となった場合、それぞれのステージに合わせて治療を行っていきます。治療については、臨床研究を根拠とし最良とされる治療方針が、ガイドラインとして各国の泌尿器科学会から発表されています。当センターでは、日本泌尿器科学会のガイドラインに準拠しながら、さらに当センターにて蓄積された臨床経験や最新の科学的な知見に基づき、現在として最良とされる治療を行うように努力しています。

膀胱がん(診療ガイドライン2015より抜粋)

上皮内がん(Stage0is)

がん細胞は粘膜に沿って広く存在することが多いため、内視鏡的に完全に切除することが難しいです。膀胱粘膜全体を治療する必要があり、BCG膀胱内注入療法や膀胱全摘術が選択肢となります。

表在性膀胱がん(Stage 0, Ⅰ)

がんの根は浅いため、経尿道的内視鏡手術(TUR-BT)で完全に切除することができます。ただし2~3 年以内に6 割以上の患者さんが膀胱内にがんが再発するため、定期的な膀胱鏡と尿細胞診検査が必要です。再発した場合には、再度、経尿道的切除を行うことになります。腫瘍が多発していた場合や悪性度が高い場合は再発リスクが高いと予想され、再発を予防するためにBCGや抗がん剤の膀胱内注入療法など追加治療が必要となることがあります。

TUR-BT手術件数

筋層浸潤性膀胱がん(StageⅡ)

がんが粘膜より下のほうへ浸潤し筋層まで深く根をはやしているため、経尿道的内視鏡手術(TUR-BT)で腫瘍の完全な切除は困難となります。したがって手術により膀胱ごと病巣を完全に切除する膀胱全摘術が基本的な治療法となります。


膀胱全摘除術の良い点は、がん細胞をすべて体から取り除くことができる、つまり根治する可能性があることです。一般的には男性では前立腺を、女性では子宮を膀胱といっしょに切除します。また、がんの状態によっては尿道をいっしょに摘出することもあります。


手術方法としては、従来より開腹手術のよる膀胱全摘を年間約20件のペースで行ってきました。しかし、高齢化の影響もあり、より身体に負担の少ない手術方法として、2018年より内視鏡を用いて行う腹腔鏡下膀胱全摘術を開始しました。腹腔鏡下膀胱全摘の手術件数は2017年は5件、2018年は7件と、徐々に増加傾向です。

 

また、2019年より手術支援ロボットを用いた膀胱全摘術が保険収載されたことを受けて、2019年より当センターでもロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘術を開始しています。

膀胱全摘術のイメージイラスト(左)、腹腔鏡下膀胱全摘に必要な手術創(右)

手術支援ロボットによる手術のイメージ

また、膀胱を摘出した後には、尿を体の外に出す方法を工夫しないといけません。これを尿路変向と言います。尿路変向には、主にストマから排泄する方法(回腸導管、尿管皮膚瘻)と尿道から排泄する方法(新膀胱)があります。それぞれ長所と短所があるため、主治医との相談の上で尿路変向の方法を決定します。

尿路変向の手術方法として、臍の下に7cm程度の小切開を加えてお腹を開き、腸管を体外に取り出して行います。今後は、腹腔鏡下に体内で行う方法も導入していく予定です。

尿路変更:回腸導管(左)、新膀胱造設(右)

これらの治療を行っても、将来的に再発する可能性がありますので、治療後も必ず医師の指示どおり定期的に検査を受けてください。

患者さんの年齢や体力、状態によっては手術以外の治療法を選択することもあります。手術以外の治療法としては、抗がん剤を使う化学療法や放射線療法があります。また、これらの方法を手術と組み合わせて行うこと(集学的治療と呼ばれます)もあります。
 

筋層浸潤性膀胱がん(StageⅢ)

膀胱全摘術の治療効果について、StageⅡ膀胱がんの膀胱全摘除術後の5 年生存率が70~80%であるのに対して、StageⅢ膀胱がんでは40~55%と明らかに悪くなります。その原因として、StageⅢ膀胱がんでは画像検査ではわからない程度の微小な転移がすでに存在する可能性が考えられています。

 

StageⅢ膀胱がんでは術前に化学療法を併用することで、死亡率低下と生存期間の延長が報告されています。したがって、術前検査の結果、StageⅢと診断された場合に膀胱全摘除術の術前に抗がん剤治療(補助化学療法と呼ばれます)が行われることがあります。

 

また、術前検査の時点でStageⅡ膀胱がんと診断されていたものが、術後の病理診断の結果、StageⅢ以上と診断された場合に膀胱全摘除術の術後補助化学療法が行われることがあります。再発のリスクを軽減させることができると考えられますが、現時点ではその有効性は十分には証明されていません。

転移性膀胱がん(StageⅣ)

がんは膀胱の壁をこえて周囲臓器へ浸潤している、あるいは全身の他臓器に転移しているため手術や放射線による根治的治療は困難です。進行を抑えることを目的として化学療法を行います。50~70%程度の方で腫瘍の縮小を認めますが、生存期間の中央値は約13ヵ月です。

 

特殊な場合として、転移がないT4 または骨盤内にリンパ節転移があるがその数が少ない場合、化学療法によって腫瘍が著しく縮小または消失すれば根治を期待して膀胱全摘除術を行うことがあります。しかし、肺や肝など他臓器に転移がある場合は、化学療法によって腫瘍が消失しても膀胱全摘除術を行うことはあまり推奨されていません。
 

腎盂がん・尿管がん

腎盂がん・尿管がんの診断

腎盂がん、尿管がんの診断には画像検査が用いられます。特に、造影剤の点滴を行いCTをとる(CT ウログラフィーという撮影方法を用いる)ことで、腫瘍や尿路にコントラストがつき診断の精度が上がります。画像診断で腎盂がんや尿管がんが疑われた場合は、尿道から膀胱鏡という内視鏡を挿入し、尿管からカテーテルを通して腎盂や尿管中の尿のサンプルを採取し、その中にがん細胞が含まれているかを調べる逆行性腎盂造影という検査を行います。この検査でがん細胞が検出された場合は、腎盂がん・尿管がんの診断や病期に応じた治療を行います。

逆行性腎盂造影のイラスト

逆行性腎盂造影でがん細胞があきらかでない場合は、全身麻酔あるいは脊椎麻酔をした上で、尿管鏡という内視鏡による検査が必要となります。

尿管鏡検査

尿管鏡でも診断が困難な場合や、腫瘍が大きい場合は脇腹の皮膚から針を刺して腫瘍の一部をサンプルとして採取する経皮的腫瘍生検という方法を用いる場合もあります。

Stage 0is

Tis のことで、上皮内がん(CIS)と呼ばれます。尿管粘膜の表面下を這うように発育する特殊なタイプで悪性度が高いがんです。内視鏡で尿管を観察しても腫瘍が見つからないことが多く、尿細胞診検査や尿管鏡下粘膜生検によってはじめて見つかります。浸潤がんとなる可能性があります。他臓器へ転移を起こすことがあります。
 

Stage Ⅰ

T1 のことで、尿管粘膜上皮に止まっているがんです。根は浅く、表面は乳頭状(カリフラワー様)の外見であることが多いです。
 

Stage Ⅱ,Ⅲ

T2, T3 のことで、浸潤がんと呼ばれます。粘膜から発生したがんが粘膜より下のほうへ浸潤し、筋層あるいは筋層周囲の脂肪組織や腎臓に達するまで深く根をはやしている状態です。放置しておくと周囲の臓器へ浸潤したり、他の臓器へ転移したりします。
 

Stage Ⅳ

T4あるいはリンパ節や他臓器に転移のある、さらに進んだ状態です。粘膜から発生したがんが、すでに尿管の壁をこえて隣接臓器へ浸潤している、あるいは肺や骨、肝臓などの他臓器やリンパ節に転移が認められる状態です。



腎盂がん・尿管がんの治療

腎盂がん・尿管がんの診断となった場合、それぞれのステージに合わせて治療を行っていきます。治療については、臨床研究を根拠とし最良とされる治療方針が、ガイドラインとして各国の泌尿器科学会から発表されています。当センターでは、日本泌尿器科学会のガイドラインに準拠しながら、さらに当センターにて蓄積された臨床経験や最新の科学的な知見に基づき、現在として最良とされる治療を行うように努力しています。

上皮内がん(Stage 0 is)

尿管粘膜の下を這うようにがんが広がっている状態です。腎尿管全摘術が標準治療となります。手術の方法としては、腹腔鏡下腎尿管全摘術を行っています。
 

腹腔鏡下腎尿管全摘術に必要な手術創


腎機能が悪く腎臓を摘除できない場合、BCG尿管内注入療法による腎温存療法が選択肢となります。
 

表在性膀胱がん(StageⅠ)

尿管粘膜上皮に止まっているがんです。腎尿管全摘術が標準治療となります。腎機能が悪く腎臓を摘除できない場合などは、レーザー焼灼術や尿管部分切除術などの腎温存療法が選択肢となります。


浸潤がん(Stage Ⅱ・Ⅲ)

尿管粘膜から発生したがんが粘膜より下のほうへ浸潤し、筋層あるいは筋層周囲の脂肪組織や腎臓に達するまで深く根をはやしている状態です。腎尿管全摘術が標準治療となります。また、画像診断であきらかでない場合でも周囲リンパ節に転移を起こしている可能性が高くなるため、当センターでは付属リンパ節郭清術を同時に行っています。
 

転移性膀胱がん(StageⅣ)

がんが、すでに尿管の壁をこえて隣接臓器へ浸潤している、あるいは肺や骨、肝臓などの他臓器やリンパ節に転移が認められる状態です。手術や放射線による根治的治療は困難となります。進行を抑えることを目的として化学療法を行います。



腎がん

腎臓は、人間の背中側に左右1個ずつ存在する臓器で、主に体内の老廃物を尿と一緒に排泄する働きを担っています。
腎がんは50~70歳に好発しますが、若い方でも進行して見つかる場合があります。発生率は10万人当たり男性が7人、女性が3人程度と言われていますが、近年腎がんの患者数は増加傾向にあります。

症状・診断

がんが小さい場合、無症状であることがほとんどです。そのため、近年では健診やその他の病気の精査の時に偶発的に発見されることが多いとされます。がんが大きくなると、お腹の張りや痛み、血尿、体重減少や発熱などの症状が出現します。

診断は、腹部超音波検査で腎がんを疑った場合、造影剤を併用したCT検査やMRI検査などでがんの進展や転移を確認します。腎がんかどうか判断が難しい場合は、皮膚から針を穿刺して組織を採取し、病理検査で精査をすることもあります。

治療

腎がんは、一般的に抗がん剤治療や放射線治療の効果が乏しく、手術での摘出が治療の基本となります。摘出不可能な病変に対しては、分子標的薬治療や免疫療法を用いることで余命の延長が期待できます。

4センチ以下の小さながんの場合や、がんを腎臓ごと摘出した場合透析になるリスクが高い場合などは、腎臓からがんの部分のみの摘出(腎部分切除術)を行います。年間20例程度、手術支援ロボットを用いた部分切除術を行っています。

部分切除術の適応にならないような位置にあるがんや、サイズの大きいがんは、腹腔鏡で腎臓ごとがんを摘出する手術(腹腔鏡下根治的腎摘除術)を行います。年間10~20例程度の腹腔鏡下根治的腎摘除術を行っています。

腎静脈~下大静脈、心臓内に進展するような大きな腎がんに対しては、外科、心臓血管外科と連携して可能な限り原発巣の切除を目指します。

がんが手術で取り切れない場合や、ほかの臓器にも転移がある場合、分子標的薬治療や免疫療法による治療を行います。新規採用された薬剤も多く、積極的に活用して治療を行っています。多種多様な副作用のマネージメントが重要となり、他科と連携して包括的に副作用のコントロールを目指し、少しでも長期間十分な量で治療が行えるようにサポートします。

精巣がん

精巣がんは発生率は10万人に1人、男性の全腫瘍の中でも1%程度とまれですが、20歳代や30歳代の男性では最も多い悪性腫瘍と言われています。
症状としては、片方の睾丸にしこりができたり、腫れることが初発症状として多いです。痛みを伴う場合も伴わない場合もありますので、陰嚢の腫れを自覚した場合はすぐに泌尿器科を受診しましょう。来院時にはすでに肺やリンパ節などに転移していることも多いため、腹痛や呼吸困難をおこす方もいます。

診断

触診:精巣そのものにしこりや腫れがあることを確認します。
血液検査:LDH、AFP、hCG、β-hCGなど腫瘍マーカーを測定し、診断の助けにします。
超音波:腫瘍が触れにくい場合や、他の疾患の鑑別に用います。
CT/MRI:がんの進行度などを調べるために行います。

以上の検査がありますが、最終的には手術で摘出した標本を組織検査して初めて診断が確定します。

治療

診断後、速やかに精巣を精巣へ向かう血管や精巣上体ごと摘出する高位精巣摘除術を行い、手術で摘出した精巣の組織を顕微鏡で調べます。精巣がんは、セミノーマと非セミノーマに大きく分かれ、それによっても手術後の治療方針が若干異なります。

転移がない場合は、定期的に再発がないか経過観察する場合が多いです。

転移がある場合は、病期や転移巣、がんの種類に応じてシスプラチンを中心とした抗がん剤治療を行います。
精巣がんは転移があっても抗がん剤がよく効くため、根治が見込めることも多いです。抗がん剤治療後に残存腫瘍を手術で摘出することもあります。

治療後

転移がない場合や再発後いったん腫瘍が消滅した症例は、定期的にCTや採血を行い再発がないか調べます。かなり長期間が経過してから再発するケースがあるため5年以上の経過観察が必要です。

副腎腫瘍

副腎は左右の腎臓の上に1つずつある小さな臓器で、様々なホルモンを分泌しています。副腎から発生する腫瘍には、ホルモンを過剰に産生するものがあり、ホルモンの種類により多様な症状を呈します。

 ホルモンの種類と症状
・コルチゾール(クッシング症候群) …高血圧、高血圧、肥満、易感染性、高コレステロール血症、胃十二指腸潰瘍、骨粗鬆症、など
・アルドステロン(原発性アルドステロン症) …高血圧、低カリウム血症、むくみ、など
・カテコールアミン(褐色細胞腫) …高血圧、頻脈、蒼白、頭痛、発汗、動悸、不安感、嘔気嘔吐、高血糖、体重減少、など

また、ホルモンを産生していなくてもサイズの大きい腫瘍では悪性の可能性が高く、摘出して調べる必要があります。副腎腫瘍の1~10%が悪性とされ、放置しておくと腫瘍が大きくなったり他の臓器に転移して手術による治療が困難になる可能性があります。肺がんなどの他の臓器を原発とするがんが副腎に転移したものも数%みられます。

診断

健康診断や他疾患の検査の時に偶然見つかることが増えており、腹部CT検査の0.3~0.8%に副腎腫瘍が認められるとされます。副腎腫瘍が疑われる場合、血液検査や尿検査によりホルモン値を調べます。無症状で発見されることが多いため、約半数の症例ではホルモンを産生しない非機能性副腎腺腫(良性腫瘍)と診断されますが、約4分の1の症例ではホルモンを過剰に産生しています。ホルモン検査の結果、症状がなくてもホルモンを産生している症例もあり、コルチゾール産生腫瘍では、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなど生活習慣病の背景として影響を及ぼす可能性があります(サブクリニカルクッシング症候群)。また、褐色細胞腫の35%が無症状であるとされます。

高血圧の原因として3~10%が原発性アルドステロン症(アルドステロン産生腫瘍や副腎過形成による)といわれており、通常の降圧薬でなかなか血圧が下がらない、40歳以下で血圧が高い、血中カリウムが低い、といった高血圧の患者さんには血液検査が勧められます。

血液・尿検査や臨床症状から機能性腫瘍が疑われる場合は、薬剤負荷試験、画像検査、副腎静脈サンプリング検査などにより、病変部位を特定します。原発性アルドステロン症では、画像で指摘された腺腫が必ずしもホルモンを産生しているとは限らず、画像検査と静脈サンプリングで約3分の1の不一致が報告されているため、静脈サンプリングは必須とされています。

治療

機能性腫瘍で、病変が片側性であれば、腹腔鏡下副腎摘除術が勧められます。全身麻酔下に腹部の3~5ヵ所に0.5~1cmの穴をあけて内視鏡や鉗子を挿入し、テレビモニターを見ながら摘出する手術です。通常、腫瘍だけではなく正常の副腎組織もまとめて一塊にして摘出します。巨大な腫瘍や、周囲組織との癒着が予想されれば、開腹手術を勧められる場合があります。腫瘍が褐色細胞腫であると疑われる場合には、腫瘍の摘出によって手術中に血圧が突然下がって危険な場合がありますので、術前に血圧をコントロールする内服治療が必要です。
 
原発性アルドステロン症は両側性病変の場合、あるいは手術を希望されない場合や手術が不能な場合は、薬物治療(アルドステロン拮抗薬)を行うとされますが、薬物治療では心房細動を完全には抑制されないという報告もあります。
 
腫瘍が両側性の場合は、正常の副腎を残すために部分切除術を行うこともあります。

尿路結石

一般外来、救急外来を通じて年間800人以上の尿路結石患者さんが受診されます。
尿路結石治療の基本方針として、①ガイドラインに基づき、②患者さんのニーズに合わせて、③より低侵襲かつ確実な治療を選択することを目標として、患者さんと相談した上で治療法を選択していきます。

治療内容

主な治療として以下があります。
①保存的治療:薬物療法、溶解療法
②ESWL(体外衝撃波結石砕石術)
③経尿道的(内視鏡)手術:TUL(経尿道的尿路結石除去術)、PNL(経皮的尿路結石除去術)
④開腹/腹腔鏡手術:切石術と腎摘出術

当センターでは上記の尿路結石治療は全て施行可能です。腎結石と尿管結石に分類し、結石の位置や大きさに応じて治療を行っています。
医学的な判断に加えて患者さんの社会的背景を考慮し、相談した上で決定しています。
基本的に大きな腎/尿管結石は保存的治療では改善(排石ないし溶解)しないことが多いため、積極的に手術を含めた加療を提案します。

①保存的治療(薬物療法、溶解療法)

自然排石が期待できる尿管結石、あるいは無症状の腎小結石については保存的加療が可能です。
薬物療法としては、結石による疝痛発作に対する鎮痛剤(NSAIDs)や排出時を促すといわれるα1ブロッカーを用います。
溶解療法は、尿酸結石やシスチン結石が疑われる場合に尿アルカリ化薬を用いて行います(尿路結石の多くを占めるシュウ酸カルシウム結石には効果は限定的です)。
保存的加療で結石が排出されない場合や結石が増大してくる場合、あるいは合併症として水腎症による閉塞を呈して腎機能障害や尿路感染症を呈する場合は以下のような治療に切り替える必要があります。

②ESWL:体外衝撃波結石砕石術

外来にて日帰り施行が可能な治療法です。術衣に着替えていただいた上で衝撃波発生装置の台座に臥床していただきます。処置前に鎮痛剤筋肉注射を行います。衝撃波装置を患部に密着させた状態で衝撃波を照射し、体内の尿路結石を砕石します。おおむね1時間超の処置時間のほか、前後の観察時間も要します。
当センターでは、2015年度にESWL装置を導入し稼働しています。ESWL施行数については2018年で290件を実施しています。

③TUL:経尿道的尿路砕石術

腎あるいは尿管結石に対して行われる手術です。全身麻酔下に尿管鏡(内視鏡)を尿道から挿入して尿路結石をレーザーあるいは空気圧を用いて破砕し、破片を抽石します。基本的に切開を要しない低侵襲な手術です。
近年では、軟性尿管鏡という屈曲可能な内視鏡の普及により、ほとんどの尿路結石がTULで治療可能になりました。当センターでは、軟性尿管鏡を導入し手術が必要と判断される結石に対してTULを積極的に行っています。当センターのTUL施行数については2018年で161件となっています。
手術は術後経過が順調であれば、5日から7日間程度の入院となります。結石が大きいないし多数ある場合は一度の手術では除去しきれない場合があり、その場合は複数回施行します。

PNL:経皮的尿路結石除去術

腎サンゴ状結石など、TULでは砕石しきれない腎結石に対して行う手術です。全身麻酔下に脇腹から腎盂への通り道(腎瘻)を作り、その道を通して腎盂鏡と呼ばれる内視鏡を挿入し空気圧を用いて結石を破砕、抽石し結石を排出します。術後は腎瘻に管を入れて、止血を確認してから抜去します。
手術は術後経過が順調であれば、10日から14日間程度の入院となります。抗凝固薬など出血しやすくなる薬に関しては事前に止める(休薬)する必要があり、外来で相談させて頂く場合があります(初診前に休薬する必要はありません)。

 ④開腹手術(腎摘出術、開放切石術)

身体にメスを入れるいわゆる開腹手術ですが、現在は低侵襲な内視鏡による結石治療が中心であるため、内視鏡では治療が難しい限られた症例に対してのみ行います。

前立腺肥大症

前立腺肥大症は、中高年男性によくみられる「トイレが近い」「尿が出終わった後に尿がしたたり落ちる」などを主症状とした良性疾患です。いわゆる排尿障害の原因となります。
その有病率は高く加齢とともに増加します。前立腺肥大症は、前立腺癌とは異なり生命に関係することはまれですが、排尿困難、頻尿、尿意切迫感、夜間頻尿などのために、生活の質(QOL:Quality of Life)に影響を与える疾患です。症状の重症度に応じて様々な治療法があります。

治療

治療法については以下が挙げられます。2017年に作成された男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドラインに基づき、患者さんそれぞれに最も適したと考えられる治療法をお薦めします。

①薬物治療:α1遮断薬やPDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬など
②経尿道(内視鏡)手術:TUR-P(経尿道的前立腺切除術)、HoLEP(経尿道的前立腺レーザー核出術)
③生活習慣指導
④定期導尿あるいは尿道カテーテル留置(自力では尿が出ない場合のみ)

排尿障害は長期化すると、慢性的な膀胱炎のほか腎機能の悪化を及ぼします。
基本的には薬物療法での改善を図りますが、投薬では不十分な排尿障害が持続する(可能性高いも含む)場合やご本人の希望に応じて、手術加療に移行します。排尿障害の改善が期待されます。

手術は術後経過が順調であれば、1週間程度の入院となります。ただし、出血があるため、抗凝固薬など出血しやすくなる薬に関しては事前に止める(休薬)する必要があり、外来で相談させていただく場合があります(初診前に休薬する必要はありません)。

泌尿器科救急疾患

当センターでは、高度救命救急センターと泌尿器科が共同して泌尿器科救急疾患の患者さんの診療を行っています。泌尿器科救急疾患として以下のようなものがあります。

①前立腺肥大症、膀胱結石、膀胱タンポナーデ(血尿)などによる尿閉

前立腺肥大症の悪化、あるいは膀胱結石や血尿でできた血塊などの異物の嵌頓により尿道が閉塞した場合、尿意があるのに排尿が全くできなくなり、このような状態を尿閉といいます。

尿閉が起こると膀胱が尿で充満するため下腹部痛がでてきます。さらに放置すれば膀胱内の圧力のため腎臓に負担がかかって急性腎不全を起こす可能性があります。

尿閉が起こってしまった場合は緊急で膀胱カテーテルで尿を排出し、場合によっては医師の手による膀胱内の洗浄が必要な場合があります。泌尿器科外来あるいは救命救急センターを受診してください。

②泌尿器感染症

腎盂腎炎
尿路結石や悪性腫瘍などで閉塞した尿路に細菌が侵入すると腎盂腎炎という感染症を起こします。腎盂腎炎は血中へ細菌が移行しやすいため、血流にのった細菌が全身に回る敗血症という重篤な状態へ進展する可能性があります。腎盂腎炎が起こると脇腹や背中の痛み、38度以上の発熱が起こります。

前立腺炎
男性の場合、膀胱の下に前立腺という組織があります。もともと前立腺肥大のあるかたや、膀胱炎などの尿路感染を契機として前立腺の感染症となる場合があります。悪化した場合には敗血症という重篤な状態へ進展する可能性があります。

上記疾患が悪化し、敗血症へ進展した場合はさらに全身の震え、顔面蒼白、意識がおかしいなどの症状がみられます。

これらの症状が出現した場合は、抗生剤治療に加え、腎盂腎炎の場合には尿管ステント留置術や腎瘻カテーテル留置術などの緊急処置が必要な場合があります。

③精巣捻転による急性陰嚢症(急激な精巣の腫脹)

急激に陰嚢が腫れて激しく痛む病態を急性陰嚢症といいます。急性陰嚢症の原因の1つに精巣捻転があります。精巣捻転とは精巣への栄養血管が含まれる精索という臓器が捻れることで精巣が虚血状態になります。長時間放置すれば精巣が壊死してしまいます。

精巣捻転は小児に多く、特に誘引なく起こります。就寝中や明け方に発症することもあります。治療には手術によって捻れの解除を行います。長時間経過して精巣が壊死している場合は壊死精巣を摘出します。

④カテーテルやウロストマのトラブル

膀胱尿道バルンカテーテルや、腎瘻カテーテル、回腸導管や尿管皮膚瘻などの尿路変更手術を受けられた患者さんで、カテーテルの閉塞や自然脱落、偶発的な抜去などがあった際や、ストマパウチへ尿が溜まっていないなどのトラブルがあった際には、泌尿器科外来あるいは救命救急センターを受診してください。

移植

腎移植

末期腎不全の治療には、いわゆる透析療法(血液透析や腹膜透析)が一般的ですが、腎臓移植というもう1つの柱があります。しかし、腎臓移植手術には腎臓提供者の存在が不可欠です。脳死患者が、臓器提供意思表示カードにて臓器提供の意思がある場合やご家族に臓器提供の同意があれば、いわゆる死体腎移植という形で移植手術が行われます。

しかし、我が国では、死体腎移植はまだ少なく、8割は生体腎移植という形で行われているのが現状です。腎不全患者さんの6等親以内の血族や親族で、厳密な評価の上ドナー適応がある場合に生体腎移植が可能となります。最近では、免疫抑制療法の進歩により、血液型不適合生体ドナーからの移植成績も格段に向上し、夫婦間での移植も増加しています。また、末期腎不全で透析導入前に移植術を行う先行的腎移植は移植腎生着率や生存率も高く、最近増加傾向にあります。

泌尿器科では、当センター腎臓内科と密に連携し腎移植術に積極的に取り組んでいます。当センターは主として、生体腎ドナーの腎摘出術及び移植手術と術後管理を担当し、免疫抑制剤などの内科的管理や長期のフォローは腎臓内科にて継続します。生体腎ドナーの腎摘出術は、より低侵襲な腹腔鏡下手術を行っています。

女性泌尿器科

中高年の女性に特有の症状として、咳やくしゃみなどで下腹部に圧がかかった際に尿がもれてしまう腹圧性尿失禁という病状が比較的多くみられます。また、「ピンポン玉のようなものが膣からとび出てくる」「椅子に座った際に股関になにか挟まった感じがあり気持ち悪い」などの骨盤臓器脱の症状もしばしば見られます。

これらの症状は、出産や閉経後のホルモン環境の変化に伴い、骨盤を支える組織(筋肉や靭帯)が弱くなった結果生じる症状であり、命に直接関わる症状ではありませんが、日常生活に大きな影響を与えます。すべてのケースが手術の対象となるわけではありませんが、手術により生活の質が大きく改善することが期待でき、当センターでは積極的に手術治療も行っています。

腹圧性尿失禁の手術

咳、くしゃみ、笑う、重いものを持つなどの動作で、お腹に圧がかかり尿がもれてしまうのが腹圧性尿失禁です。尿道の締りが悪くなったり、腹圧で尿道位置がずれることで、膀胱に溜まった尿の水圧を支えきれず尿がもれてしまうのが原因です。実際の手術では、ポリプロピレンという素材を用いた帯状のテープを尿道の下に置き尿道を支えることで、これらの症状が劇的に改善します。比較的短時間の手術で、短期入院での治療が可能です。

骨盤臓器脱の手術

骨盤臓器脱は、別名「性器脱」「膣脱」とも呼ばれており、骨盤内の子宮、膀胱、直腸などの臓器を支える組織が弱くなり、それらの臓器が膣内に下垂する病気です。お産を繰り返すことや、慢性の咳や便秘、肥満、重いものを絶えず物を持つ仕事などが原因としてあげられます。

初期には、膣から丸いものが触れることが多く入浴時などに気付かれます。症状が進むと、股の間に物がはさまったような症状が出現し、尿や便が出にくいなどの症状も現れます。部位的に一人で悩まれる方も多い症状ですが、適切に治療を行えば症状の改善が期待できますのでぜひ専門医にご相談ください。

①保存的治療

治療法としては、リングペッサリーと呼ばれる装具を膣内に挿入し臓器を支える助けとする方法があります。あくまで保存的治療であり、定期的な交換が必要となります。膣炎などを合併し、おりものや出血を生じることもあるため、何らかの理由で手術が受けられない方や手術までの待機期間などの使用に限られます。

②手術療法

手術治療の考え方は、歴史的に弱くなった靭帯などの支持組織を見つけ補強することが重要とされ、その目的のため、種々の工夫がなされてきました。最近では、ポリプロピレンメッシュと呼ばれる人工素材を利用して補強するメッシュ手術が開発され注目されています。メッシュ手術では、膣から行う手術(TVM手術)とお腹から行う腹腔鏡手術(LSC手術)が代表的です。

当センターでも、従来TVM手術を行っていましたが、最近では、より広い視野で直視下に安全に行うことができるLSC手術を取り入れ積極的に行っています。LSC手術は、腹腔鏡下仙骨膣固定術とよばれ、子宮または子宮摘出後の腟断端をメッシュで吊り上げて仙骨前面の靱帯に固定する手術で、2014年4月から保険適用となりました。1週間程度の入院が必要ですが、術後の性交渉への影響も少なく、比較的若い女性にも行うことが可能です。

腹圧性尿失禁手術も骨盤臓器脱手術もがんの手術とは異なり、生活の質を改善するための手術です。そのため、術前には、慎重な精査や評価が必要となります。また、女性泌尿器科は婦人科領域とも重なる領域ですので、必要に応じ婦人科と連携しつつ精査・治療に当たります。


泌尿器科外来を受診される方へ

当科における診療、および地域医療機関・泌尿器科クリニックとの病診連携について

● 当科では地域中核病院の専門診療科として、最善最適な医療を地域すべての患者さんに提供することを目標としています。
● この目標の達成にあたり、当科では地域医療機関や泌尿器科クリニックの先生方と連携して診療を行っています。
● 前立腺癌検診などの予防医学、慢性的な排尿障害に対する投薬治療、膀胱鏡検診などの診療については、お住まいの地域の医療機関あるいは泌尿器科クリニックの「かかりつけ医」にお願いし、当センターでは手術や高度先進医療などの専門的な検査や治療が必要な病態に対する診療を行っています。
● 排尿や体調に不具合がある場合は、まず、お住まいの近くの医療機関または泌尿器科クリニックを受診してください。
● 当科の受診に際しては、かかりつけ医からの紹介状あるいは診療情報提供書をお持ちください。
● 当科での必要な検査や治療が終わり、状態が安定した患者さんは、紹介から約3ヵ月以内をめどに最寄りのかかりつけ医や泌尿器科クリニックでの診療をお願いしています。
● かかりつけ医のいない患者さんに対しては、適切な医療機関または泌尿器科クリニックをご紹介いたします。

紹介状(診療情報提供書)をお持ちの患者さんの初診について

● 当院では、紹介状(診療情報提供書)をお持ちの初診患者さんの予約をお取りしています。
● 外来診察においては、予約のある紹介初診患者さんを優先して診療を行っています。

外来担当医の変更について

● 緊急処置や対応、手術などの理由で外来予約日に主担当医が不在になる場合があります。
 その際は、代わりの医師が診察いたします。

より良い地域医療の構築を目指しています。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。